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ALPS処理水についてのお話

処理水の海洋放出につきまして、多くのご意見とご質問をいただいております。Q&Aについてこちらでお話しさせていただきます。その上で、いただいたご意見に向き合い活動を続けて参りたいと思います。皆様のご意見をお待ちしております。

Q.反対の声が大きい中、政府が処理水の海洋放出を決めたことは問題なのではないか?

福島第一原子力発電所の廃炉、処理水の処分は、責任を持って福島の復興を成し遂げる国の任務である。日本を背負う子どもたちにこの問題を背負わせないためには「今」が決断の時であった。廃炉のために必要な高レベル放射性物質の取り出し等は、非常に難易度の高い作業である。1000基を超えるタンクの存在は、この廃炉のため、そして新しい福島を創造するために越えなければいけない壁である。

また、大量のタンクの存在は視覚的に外からの風評につながってしまう。また、避難をしている方々の「故郷に帰りたい」という心の火種を完全に絶やしてしまう事にもなりかねない。浜通りをはじめ福島全体の復興を果たし、未来ある輝かしい福島を創造するためには、1000基を超える大量のタンクの存在というのは、まっさきに乗り越えなければいけない第一関門である。

今回の決定に当たり、6年間に渡り専門家があらゆる選択肢を検証した結果も踏まえ、他に効果的、即効性のある選択肢はない と判断している。国際的な中立機関である国際原子力機関(IAEA)のサポートも得て確実に安全確保することと、徹底的な風評対策、そして地元の方々、この処理水に関わる方々のより深いご理解を得られる活動を行うことで海洋放出を決定した。

 海洋放出は、世界中の原子力施設ですでに安全に実施されており、国際慣行に沿うものである。地元の方々、関わる全ての方々への理解を深めてもらえるように尽力し、ぬかりない徹底した対策を行う。

Q.事故を起こした福島第一原発の水は通常の原発の水とは違い、危険なのではないか?事故原発特有の放射性物質 が含まれているのではないか?

事故を起こした福島第一原発の水には、通常炉の排水からは検出されない核分裂由来の核種が含まれている。

規制基準を下回るまで浄化するために導入されたのが多核種除去装置(ALPS)であり、トリチウム以外の核 種を取り除くことができることが確認されている。

国際基準に沿った安全に関する規制基準では、通常炉か事故炉かを問わず、水に含まれる「全ての核種の放射線に よる影響の合計」で判断している。

規制基準を遵守する限り、人体や環境の安全に問題は無い。

Q.海外からの輸入停止など、風評被害への対応はどうなっているのか?

国内外で懸念を煽る声もあるが、IAEAや米国の協力も得ながら、これからも科学的な知見に基づく正しい情報 を丁寧に発信し、理解を得ていく。

風評対策は地道な努力を積み上げていくことが重要である。

事故直後、54か国が日本の食料品に輸入規制をかけていたが、丁寧な説明を重ねた結果、中・韓等を除く39か国が完全に撤廃している。引き続き、国際社会への働きかけを強めていく。

国内では、広く消費者の理解を高める努力はもちろん、 実際に商品の取扱いを決める流通や小売などへの集中的な説明など10年でつちかってきた信頼と経験をもとに活動を行っていく。     それでも生じる風評被害に対しては、東京電力任せにせず、被害者1人1人に寄り添う賠償を徹底していく。         

<参考>

 ①風評への対応は、地道な努力を積み上げていくことが大切

○国際的な対応

福島第一原発事故後、54か国が日本からの食料品の輸入規制を導入した が、その後の日本政府等の努力により39か国が完全撤廃している。他方、 中国、韓国はいまだ福島からの輸入を停止中である。

在京大使館、在外公館を通じた働きかけ、ジェトロ等による海外での販売促 進イベントの実施等により、科学的な知見に基づく情報発信を継続している(日本食品のおいしさ)。→世界遺産になった和食に対する注目が高い中で福島産や常磐物をアピールしていく。

〇国内での対応

生産者の手から消費者の手に届くまでに関わる流通、小売りなど1つ1つの段階への働きかけより、福島産、常磐ものの美味しさや魅力を多くの人々に知ってもらう事で消費拡大、そして風評被害の払拭につながる。

 ②賠償の徹底

○これまで同様、被害をこうむる方がいる限り、賠償を継続する。

福島第一原発事故後、漁業者に対する賠償は、北海道、青森、岩手、宮城、 福島、茨城、千葉の 7道県などで実施している。

※現在は、福島県沖を漁場とする漁業者や外国より輸入規制が課されている 産品などに対する賠償が継続している。

 処理水の処分による風評被害が生じれば、 賠償期間、地域、業種を画一的に限ることなく、被害の実態に見合った柔軟で必要かつ十分な賠償を実施する。

Q.地元の漁業者等への説明が不足しているのではないか?

決定に当たっては、地元の自治体や経済団体、消費者団体など、そこに暮らす方々の生の声を聞き様々な方々と議論を重ねてきた。

今後、安全確保のための設備工事や規制対応のため、実際の放出までには2年程度を要する。それまでの間に、地域の皆様、そして処理水に関わる全ての方々のご理解を得られる徹底的な対策を講じていく。

Q.タンクに保管したままにすべきではないか?

今後福島だけでなく日本が世界を舞台に活躍する子どもたちが、福島そして日本で生まれたことを誇りに持ってもらう為には「今」が決断の時である。

新しい福島の創造、輝かしい未来ある福島の復興を確実に進めていくことで責任を果たしていく。

Q.大阪湾や東京湾に持ち出して放出するべきではないか?

風評対策として、「他の地域に持ち出して、負担を分かち合う」という議論があることは承知している。

放出先の知事が了解すればできるものではなく、周辺の 県や市町村その地域の漁業者や観光業者など、新たに幅広い関係者との調整や規制への対応が必要であり、その調整に相当な時間を要してしまう。放出までの時間を考えれば現実的な選択肢とはならないと考えている。

また、かえって風評を助長するとの考えもある。 その有 効性については 慎重な判断が必要である。反対に、地元の魅力を本当に知っているのであれば他に持ち出すという選択はしないであろうという声もある。

そして、この処理水が引き起こす問題を自分たちの力で解決したならば、国際社会から「福島」が注目され、これまで見てきた以上、想像した以上に発展した姿を望めるのではないだろうか。地元に誇りを取り戻すために。

<参考>

○福島第一原発の廃炉は、放射性物質のリスクから人と環境を守るための継 続的なリスク軽減活動である。 県外に処理水を持ち出すことは政府の有識者会議(ALPS小委員会)も否定的である。

○ALPS小委員会においては、

①保管施設や放出施設を設置する自治体のみならず、その輸送ルートの自治 体の理解を得ることや、

②放出計画、放出・保管施設、輸送時の漏えい対策等について、原子力規制 委員会の許可が必要となること、

などの理由から、 相当な時間を要するため、直ちに実施可能な案にはならないと検証されている。

Q.タンカーで海に持ち出し、外洋で放出する方法もあるのではないか?

処理水に限らず、船上から海への放出は、 国際条約違反 であり、実施できない 。

<参考>

陸上からではなく、 海上から放出することは、国際条約(ロンドン条約)違反となる。
〇ロンドン条約・ロンドン議定書は、船舶等(船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物)から、廃棄物等を海洋投棄することを禁止し ている。

・船舶から投棄

→          領海内・湾内を問わず、国際条約違反。

・陸上の排水施設(パイプラインを含む)を通じ、陸上から放出

→          ロンドン条約の適用対象外。国際条約違反ではない。

Q.トリチウムは、人体や環境に悪い影響があるのではないか?

トリチウムは、元々自然の中で生成されており、福島第一原子力発電所の処理水は安全に関する国際基準よりもより厳しく規制された日本独自の基準値を下回る濃度である。そのため、人体や環境に悪影響はない。

Q.処理水からトリチウムを分離して放出することはできないのか?

トリチウムは水と成分が類似しており、現在の科学技術では完全な分離が困難である。なお、トリチウムを分離する技術は、過去に30億円以上をかけて実証実験を行ったが、「すぐに使える技術はない」という評価に至っている 。また、IAEAも同様の認識を示している。特に、本件は、東京ドームいっぱい(満杯)の水から、 大さじ一杯の水を取り出すような作業であり、一朝一夕では不可能である。

福島の復興、未来を考えれば、技術の完成を待つことは、現実的ではない。もちろん、技術動向は注視し、実用化できる技術は積極的に取り入れて参りたいと考えている。

Q.処理水の海洋放出は、海外からも批判されていているが大丈夫なのか?韓国が提訴するとの話があるが、きちんと対応していくのか?

現実的には批判を繰り返している中国・韓国を含め、国内外の原子力施設では、安全に関する国際的な規制基準を満たした上で海洋放出を行っている。

処理水の海洋放出も、 国際基準に沿った規制を守っていく。IAEAの協力も得て、韓国を含む国際社会に科学的 根拠に基づく透明性ある説明を行っていく。

海外からの批判に対しては、事実をもとに毅然とした態度で反論を行い、真摯に理解を求める対応をしていく。

<参考>

〇トリチウムを希釈し、規制基準以下で海洋放出する方法は国際慣行に沿う。

○トリチウムは、世界中の原子力施設で放出。中国、韓国、フランスなどでも 放出している。

・          韓国の古里(こり)原発:年間 50兆ベクレル  (2018年)

・          中国の寧徳(ねいとく)原発:年間108兆ベクレル(2018年)

・          仏国のラ・アーグ再処理施設:年間 1 京1400兆ベクレル (20

18年)

○ALPS処理水のトリチウムは全体で約780兆ベクレルであり、基本方 針では年間22兆ベクレル以下で放出するものとされている。

○国際的に統一された考え方を踏まえて設定される国内の規制基準に沿っていれば、どの国も放出可能とされている 。

IAEAも、海洋放出は国際慣行に沿うとの評価であり、米国、OECDからも肯定的な評価を得ている。

米国:日本は選択肢と影響を検討し、その決定について透明性を保ち、世界的に受け 入れられている原子力安全基準に沿ったアプローチを採用したと思われる。

米国食品医薬品局(FDA):海洋放出が、日本から輸入する食品や米国の沿岸で漁獲される海産物を含む、米国の国産食品の安全性に与える影響はないと考える。

IAEA(国際原子力機関):処理水の処分方法を決定したという日本の発 表を歓迎。 日本が選択した処分方法は、技術的に実現可能であり、国際慣行に沿ったものである。 NEA(OECDの原子力部門):処分に関する決定は、廃炉に向けた極めて重要なステップ。この技術的選択肢は、 広範で科学的なコンセンサスを反映したものである。

Q.タンクの中には、規制基準を満たしていない汚染水があるのではないか?

現在、タンクに保管されている水全量のうち 7割は 、海洋放出の規制基準を満たしていないものである。これは、ALPS導入初期に性能向上前に処理されたものや、周辺地域への影響をなくすためにスピード優先で処理したため、処理の精度や水の質が低いものになった。これらは、放出に先立ち、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を満たすまで何度でも処理を行い、安全性を確かなものにしていく。

<参考>アルプスによる再浄化の実績事例(2020年12月公表)

セシウム137

規制基準             90ベクレル/リットル以下       

再浄化前             599ベクレル/リットル           ⇒          規制基準を満たしていない

再浄化後             0.185ベクレル/リットル    ⇒          再浄化で規制基準を満たす水準に

Q.規制基準に沿うものであっても、東京電力の事は信頼できない。第三者はどう関与するのか?

安全に関する規制基準を確実に守ることはもちろん、 国際機関や地元自治体など「第三者の目」による監視を入れながら、透明性を確保していく。

また、また、 環境省を中心に、新たな専門家会議を立ち上げるなど、第三者が関わるモニタリング体制を拡充する。

<参考> ALPS処理水処分方針(モニタリングへの第三者の関与)

①IAEAの協力を得て、分析機関間の相互比較を行う などにより、分析能力 の信頼性を確保。

②東京電力が実施するモニタリングのための試料採取、検査等に 農林水産業 者や地元自治体関係者等が参加 。

 ③ 海洋環境の専門家等による新たな会議を立ち上げ、海域モニタリングの実施状況について確認・助言 を行うこと等により、客観性・透明性を最大限高める。

以上が主な質問と答えになります。皆様のご意見をお待ちしております。お読みいただきありがとうございました。

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